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かくれんぼ(下)

<かくれんぼ(下)>

もう いいかい?




もう いいよ





ケイトくんは、人並みに成長していきました。
それなりに人生に失望しながら、社会を呪いながら…
それでも、自殺することもなく生きながらえまして、大学生になりました。

経済的に大学進学は諦めていましたが、
奨学金がもらえたので、地元の国立大には進学できました。
進学していなかったら全く別の人生を送っていただろうなぁと、
空想するのは儚い趣味です。


人生って、本当に一本道ですね。昔を振り返るたびに、つくづくそう思います。


昔を振り返るのは、あくまでも趣味。
趣味ということは、楽しんでやっているわけで。

ふと思い出された、過去のささやかな一枚絵を、
今の自分なりに調べて探ってみるのは、なかなかに楽しい作業であります。

ルーツを辿る作業にもなるんでしょうね。
私という人間を象っていったものが、一体なんなのか。再確認できる楽しさがあります。



ある時、私は件の「山」のことを思い出しました。
脈絡なく急に、です。

山、砂鮫、広場、砂場…一緒に遊んだ子ども達。

今あの山がどうなっているのか、無性に気になり始めました。


二度の引っ越しがありましたが、
その山は自転車で行けなくもない距離にあったので、
思い立ったその週のうちに出かけてみました。


昔住んでいたアパートは、そのままそこにありました。
…あ、そのまま、というのは嘘です。外壁が塗り替えられ、
一見すると別の建物のようではありました。

それでも、10数年の間にすっかり様相の変わった町並みを見ていると、
「そのまま」と言ってしまって差し支えないかと思います。


無くなった建物や、新たに立ち並んだコンビニやファミレス…
久しぶりに来たこの街に、私はそれでもノスタルジーを感じました。

山までの途中、ドブ川を越えて、猫がたくさんいた家の脇をすり抜けながら、
この街に暮らしていた記憶を、鮮明に取り戻していったのです。



山の麓に着きました。

自転車は、神社があったのでそこに置かせてもらいます。

暑かったのでダイエットコーラか何かを自販機で買った記憶があります。
あの頃はコカコーラ・ゼロは無かったんですねぇ。
そう思うと、この体験すら、昔話になっていってしまっているようです。


飲み物を買った後で、例の排水溝を探しました。
すぐに見つかるかと思ったのですが、なかなか発見できず。

確かここだと思っていた場所が、記憶違いの的外れだったのか、
もしくは排水溝自体が作り直されて場所が移ってしまったのかと考えながら、
その付近をうろうろと散策しました。


15分くらい探して、早くも飽きはじめた頃に、
それらしいコンクリートの排水溝を見つけました。
思っていたより細くて、滑り台にする発想は今なら浮かばなかったでしょう。
身体が大きくなっていることを実感して、月日が流れていることを改めて認識しました。



周囲に人影もなかったので、恥ずかしげもなく排水溝沿いに登っていきます。


しかし、結構な距離を歩きましたが、
砂鮫どころか、その手前の平地にすら行き着きません。
15分くらい登ったり降りたりしたところで、疲れてきたので帰ることにしました。


…ん、
根性無しとか言わないでくださいよ。
もともと基本的にはインドア派な私の、気まぐれな冒険です。
飽きたら帰る。自然なことでした。

無駄な体力の消費は、元より性に合わないのです。
私らしいやり方で、帰宅してから調査しよう、と速やかに頭を切り替えました。



その日の夕食時、母に昔のことをいろいろ聞いてみました。

反則技ですが、一番手っ取り早い方法です。
私は幼児だったかも知れませんが、母はすでに大人だったわけで、
「山」に関しては具体的に記憶も知識も持っているはずです。



結果、思った以上にすんなりと情報を入手することができました。

会話は関西弁でしたが、翻訳してお届けすると、こんな感じ。


母:…山?
私:うん、昔住んでた近所の
母:砂場があるような公園は、その辺にはなかったはずだけど。
私:公園…っていうわけじゃなくて…砂場がある広場?
母:は?何それ。ないない。


…以上。


私が遊んでいたはずの場所は、「ない」。いや、そう言われても。

私の腑に落ちるわけがなく、あれこれ質問してみましたが、
母にとっては興味もない、どうでもいい話。
まともに取り合ってくれません。


ぶっきらぼうに答える中で、砂鮫の正体だけはかろうじてわかりました。
正確に言うと、おそらくこれだろうと、推測することはできました。

母の不誠実な応対の中で出て来たことでしたが、
あの山には、戦時中に作られた防空壕が点在していたらしいです。



…砂鮫は、防空壕?


なんだか、鮫に見えていたはずの記憶の中の光景が、
実際に私の網膜に映っていた景色に、すり替わっていくような感じがしました。



後日、改めて山に向かいました。


結局、前回同様にあてもなく彷徨っただけですが、
砂鮫の正体を知ったせいか、前は気にならなかった別の物が目に入ってきます。
景色は同じはずのに、違ったものが見えました。


山には、どうやら霊園や墓地がたくさんあったようです。

排水溝周辺を往復している途中にも、木々の隙間を縫って、
向こうに墓地があることが確認されました。



探していくうちに、二度とあの場所に辿り着けない確信だけが、私の中で強まってきました。
母が言うように、あの場所は「なかった」のかもしれません。

私自身が体験したことのはずで、景色も比較的鮮明に残っているにもかかわらず、
私はすでにあの場所に行き着くことを諦めていました。


一緒に遊んだはずの子ども達は、どこへ行ったんでしょうね。



あれは幽霊だったんだよ…

って、言ってしまえば簡単で、
陳腐な怪談の出来上がりなわけですが、
私は安直な答えでは満足できないようです。
とは言え、これ以上知ることもできなそうだと、わかってはいますが。



昔から、「幽霊のようなもの」が見えます。

狙って毎回見えるわけではありません。
時々、気づいたら見えています。
そして、注視していると消えてしまいます。

怖がりな人には「俺、幽霊が見えるんだぜ」って言ってやります。
私は笑いながら言ってますが、心の中には、実はこっそり、わだかまりを残しています。


あれって、本当に、死んだ人の霊なんでしょうか?


私は、数組の母子連れの幽霊と出会い、
幽霊と一緒に遊ぶという心霊体験をした。


一文でまとめればそれだけのことですが、
実際に経験している私には、どうにも納得がいかないのです。
確かに一緒に遊んで、私は、楽しかったはずなんですよね。



なんで今は、見えないんだろうなぁ。



彼らが、
彼らを見えない私に、
「地蔵マリオ」をやってるんなら寂しいなって、

そんな風に思うのでした。





もう いいかい?



…よくはないけど。


2009.6.27~29
若干の改稿 2012.12.1
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…というコラムでした。

これ、当時フリーターだった頃に
休憩の合間に書いた文章だったような。

あれからもう3年以上。
あっという間に寿命が尽きそうですねぇ。


そんなわけで、次回は2012年12月現在の目線で
『ネコ公園で待ってる』という作品を振り返ってみて、
あれこれ書いてみようかなーと思います。

思い付きでガーッと書くので、たぶん脈絡無い文章になりますが
作品をより楽しんでいただけるような内容になれば良いなと思います~
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プロフィール

Kate

Author:Kate
sweet ampoule代表
主にシナリオ担当です。

ここでは作品にまつわるエトセトラや制作の裏話を中心に更新していく予定です。
時には作品と全く関係のない記事も書くかと思いますが、まったりお楽しみくださいませー
なお、初めてお越しの方は『はじめに。』から順番に読まれることを一応推奨しておきます。

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